Working Paper / 研究ノート No.001
世界一厳しいトレーニング
― 最短最速で企業価値をあげるには―
At a glance / 要点
- 判断基準は3つの問いに固定される。「企業価値を最大化する」「お金を稼ぐ」「これを最短最速でやるには、どうしたらよいか」。論点が増えても、最後はここへ戻る。
- 90日・週単位で区切り、学習時間の88%を復習に充てる。各区切りで「自分で自分をファイヤーする」判断を行い、今のやり方を続ける合理性を確かめる。
- 経営者の役割は、オペレーションではなく人と構造の設計にある。「自分でやるな」「1on1のプロになれ」「契約書と株式のタワーを作る」「思想とキャッシュマシーンを分ける」。
- つくろうとしているのは、知識の量ではなく意思決定の型である。同じ対象でも、問いが変われば見える世界が変わる。
Abstract / 要旨
私は現在、世界トップクラスに厳しいとされるグローバル戦略のビジネススクールで、1日も休まず、毎朝5時に起き、くらいつきながらトレーニングをしている。
ここで最も学んだことは、
「5分でも気を抜いたら置いていかれる」
という感覚である。
トレーニングは90日を一つの単位として、さらに週単位で区切られる。
そして、自分自身に対して、
「自分で自分をファイヤーする」
という判断を行う。
30分のトレーニングであれば、5分は休み、22分は復習、3分は新しいこと。
つまり、実際に学んでいる25分のうち、88%が復習である。
これは、知識を増やすためだけの訓練ではない。
企業を見る。
人を見る。
研究を見る。
店舗を見る。
ニュースを見る。
「それが価値を最短で最大化するのか」
これが判断基準になる。
88%実際に学んでいる25分のうち、22分が復習(22 ÷ 25 = 0.88)。
出典:本稿 Abstract
1.目的を、途中で変えない
日々のトレーニングで、最初に置かれている基準は明確である。
「企業価値を最大化する」
「お金を稼ぐこと」
そして、
「これを最短最速でやるには、どうしたらよいか?」
事業を考えていると、途中からさまざまな要素が入ってくる。
商品。
人。
組織。
マーケティング。
資金。
技術。
契約。
それぞれは重要である。
しかし、その話をしているうちに、最初の目的が変わってはいけない。
何のためにやっているのか。
企業価値を上げるためである。
お金を稼ぐためである。
そして、それを最短最速で実現する。
話がどれだけ複雑になっても、最後はここへ戻る。
私は、この「目的を途中で変えない」ということを繰り返しトレーニングしている。
- 商品
- 人
- 組織
- マーケティング
- 資金
- 技術
- 契約
- 企業価値を最大化する
- お金を稼ぐ
- これを最短最速でやるには、どうしたらよいか
出典:本稿 §1
2.はじめに決めること――「自分でやらない」
繰り返し出てくる言葉がある。
「自分でやるな」
日本には、忙しい経営者が多すぎる。
経営者が忙しいということは、経営者自身がオペレーションの中に入っているということである。
自分で営業する。
自分で現場を見る。
自分で資料を作る。
自分で問題を処理する。
目の前の仕事は進んでいるように見える。
しかし、経営者自身がオペレーションに入り続ければ、全体を見る人がいなくなる。
3.「ハイエク型の暴走列車」
お金を稼ぐことへ強いものを走らせるとゴールドシャワーが落ちてくる。
4.小さな商店を見て、100億円を考える
毎日町を歩きながら、小さな商店を見ても、
「100億企業にしてるシミュレーション」
をする。
現在の売上が小さいから、小さい会社。
一店舗だから、小さい事業。
そう見るのではない。
目の前にある会社を、
どう組み替えれば企業価値100億円になるのか。
という前提で見る。
だから、一つの店を見ても、
「この店、流行っているな」
では終わらない。
「これを100億にするなら?」
まで考える。
いま何店舗あるかではない。
いま売上がいくらかでもない。
この会社に何を足すのか。
何を切るのか。
誰を入れるのか。
どの市場につなぐのか。
何を持たせるのか。
どのような構造になれば、今とはまったく違う企業価値になるのか。
街そのものが、毎日の企業価値シミュレーションの教材になる。
5.「1on1のプロになれ」
経営者の役割は、
「その道のトップオブトップをジョインさせる」
ことである。
自分自身が、すべての分野のトップになる必要はない。
研究であれば、研究のトップ。
金融であれば、金融のトップ。
法務であれば、法務のトップ。
経営であれば、経営のトップ。
それぞれのトップ・オブ・トップが参加したくなる構造をつくり、その能力が最大化される場所をつくる。
そこで重要になるのが、人を見る力である。
その人を絞り切った時の
最後の一滴は何か。
どこに置けば最も価値が上がるのか。
だから、1on1そのものが経営になる。
6.泥棒に狙われる企業を作る
トレーニングの中で出てきた、強烈な言葉がある。
「泥棒に狙われる企業を作る」
泥棒に狙われるくらい、誰が見ても価値のある企業をつくる。
誰が見ても欲しいと思う。
誰が見ても価値があると分かる。
それほど明確な価値を持った企業にする。
そして、その価値を守るために、
「契約書と株式のタワーを作る」
何を持っているのか。
誰が持っているのか。
どの会社が持っているのか。
誰にどの権利があるのか。
利益はどこに入るのか。
意思決定権はどこにあるのか。
それを契約と株式によって構造化する。
| 項目 | 問い |
|---|---|
| 資産 | 何を持っているのか |
| 保有者 | 誰が持っているのか |
| 保有法人 | どの会社が持っているのか |
| 権利 | 誰にどの権利があるのか |
| 利益 | 利益はどこに入るのか |
| 意思決定 | 意思決定権はどこにあるのか |
出典:本稿 §6
7.思想とキャッシュマシーンを分ける
組織設計についても、印象的な言葉があった。
「思想は、研究所でやる」
そして、
「研究所でしっかり研究したものを、ストアタワーで実施、ストアタワーはキャッシュマシーン」
ストアタワーはお金を稼ぐ場所。
研究所は研究する場所。
これらを、すべて一つの箱の中に入れない。
| 組織 | 役割 |
|---|---|
| 研究所 | 思想をもち、研究する場所 |
| ストアタワー | 研究所で研究したものを実施し、お金を稼ぐ場所(キャッシュマシーン) |
出典:本稿 §7
8.失敗は捨てない
トレーニングの中には、
「失敗BOX」
という考え方がある。
失敗したことを、なかったことにしない。
失敗を次の糧、次の知見にするために、しっかりためておく。
成功したことだけが資産なのではない。
失敗も、次の意思決定に使うことができれば資産になる。
そのために、
戦略的な小さな失敗を繰り返していく。
大きな失敗になる前に、小さく試す。
結果を見る。
違えば変える。
そして、また試す。
トレーニングも同じである。
90日で区切る。
さらに週単位で区切る。
そして、
「自分で自分をファイヤーする」
今のやり方を、そのまま雇い続ける合理性があるのかを見る。
そのサイクルを早くしていく。
- 小さく試す
- 結果を見る
- 違えば変える
- また試す
出典:本稿 §8
Discussion
これは「金融知識」のトレーニングではない
90日。
週単位。
自分で自分をファイヤーする。
88%は復習。
企業価値を最大化する。
お金を稼ぐ。
最短最速でやる。
自分でやるな。
契約を結ぶ。
研究がスタートの会社はファンド。
100億企業にするシミュレーションをする。
1on1のプロになる。
トップ・オブ・トップをジョインさせる。
泥棒に狙われる企業をつくる。
契約書と株式のタワーをつくる。
思想とキャッシュマシーンを分ける。
失敗は失敗BOXにためる。
一つずつ見ると、別々の話に見える。
しかし、毎日繰り返していると、これらが一つにつながり始める。
それは、
「何を見るか」ではなく、「どう見るか」を変える
ということである。
同じ店舗を見る。
同じ会社を見る。
同じ研究を見る。
同じ人を見る。
同じニュースを見る。
同じものを見ていても、その人の中にある判断の型が違えば、見えているものはまったく違う。
売上を見るのか。
企業価値を見るのか。
人を見るのか。
配置を見るのか。
研究成果を見るのか。
その研究を中心につくられる資本構造を見るのか。
商品を見るのか。
その商品から生まれるキャッシュを見るのか。
同じ対象でも、問いが変われば見える世界が変わる。
この90日間でつくろうとしているのは、知識の量ではない。
意思決定の型そのものなのである。
| 対象 | 対象そのものを見る | そこから生まれる価値・構造を見る |
|---|---|---|
| 店舗・会社 | 売上 | 企業価値 |
| 人 | 人 | 配置 |
| 研究 | 研究成果 | その研究を中心につくられる資本構造 |
| 商品 | 商品 | その商品から生まれるキャッシュ |
出典:本稿 Discussion
Conclusion
私は、まだトレーニングの途中にいる。
だから、この文章は完成した理論ではない。
研究ノートである。
今日理解した言葉が、明日は違って見えるかもしれない。
そして90日後には、同じ言葉の意味を、今より深く理解しているかもしれない。
だから残す。
そのとき、何を教わったのか。
その言葉を、自分がどう理解したのか。
実際の意思決定でどう使ったのか。
その結果、何が起きたのか。
それらを記録していく。
88%は復習。
同じことを、何度も繰り返す。
その中で、
「企業価値を最大化する」
「お金を稼ぐこと」
「これを最短最速でやるには、どうしたらよいか?」
という問いが、意識して思い出さなければ使えない言葉ではなく、
自分自身の判断基準になるところまで。
そして、このトレーニングには一つ問題がある。
どれだけ結果を出しても、卒業させてもらえないんです。
どうやら、企業価値を上げ続ける限り、このトレーニングにも終わりはないらしい。
このトレーニングは続く。
引用表記:浅沼稚乃(2026)「世界一厳しいトレーニング」Fuwally Global Holdings Insights, Working Paper No.001.